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定石嫌いの人はたいてい「手順を覚えるのが面倒くさいから」と言われます。 でも、そういう人でも車の運転では、いろいろな道を知っていて、久しぶりに通っても不思議と忘れていないものですよね。ポイントとなる交差点が近づくと思い出して、左折した方が抜け道で早いけど、空いているときは真っ直ぐ行った方が走りやすいとか。
定石をむやみに覚えようとしても無理です。楽しくないですからね。運転で道を覚えるのと同じじゃないですか。目的地までのベストルートにこだわることはありません。状況に応じていろいろな道があっていいはずです。定石を学ぶということは、手順の暗記ではなくて、ポイントとなる手筋の発見と感動だと思います。
本書は『週刊碁』平成19年5月14日号から20年7月21日号までに掲載された連載講座「筋力ジム」に加筆、修正を加えたものです。最初に講座を始めるとき、編集室から中盤戦、接近戦をテーマにせよとの指令でした。私はそういうキャラだとイメージされているのです。実はその通り! 布石やヨセより戦いが大好きで、石が接触しないとエンジンがかかりません。あれ? 皆さんと同じですね。
実戦でよく見かける形を題材として、明日の対局にすぐにでも効果が出るものにしたい! 編集室の人たちとネタ探しにあーでもないこーでもないと毎週ジタバタしたことが思い出されます。大技、小技、接近戦でのポイントなどをアットランダムにどんどん取り上げていき、あっという間に一年が過ぎました。週刊碁ですから、その時節に合わせたネタにもしたつもりで、少々強引な? こじつけなどもありました。それはそれで読者の皆さんに楽しんでいただけたかと勝手に思っています。
この度、単行本化するにあたり、「中盤花形戦法」のマニュアル書として変身せよとの指令でした。一見すると定石書仕立てにはなっていますが、私が皆さんに伝えたかった「知識よりも柔軟な筋力を鍛えて欲しい」との思いはそのまましっかり煮込んであります。本書を読んでいただき、一人でも多くの方が武闘派の仲間入りされることを期待します。
2009年4月20日発売
著者:加藤充志
B6判/208頁
定価 1200円+税
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