【ドイツ学生囲碁団体戦2005】
(2005/9/24・25)



ハラルト・クロル・記、浅井英樹・訳
 2005年9月24・25日、ドイツ北部の都市カストロプ・ラウクセルにて、故ハンス・ピーチ日本棋院棋士六段のご両親の主催による、ドイツ学生囲碁団体戦2005が開催されました。優勝チームは、エルディングのアンネ・フランク・ギムナジウムで、メンバーは、マティアス・キィアン(4級)、マクシミリアン・ドライアー(6級)、コルビニアン・リープル(12級)です。

 今年カストロプ・ラウクセルで行われた学生囲碁団体戦2005(第3回ハンス・ピーチ・メモリアル)は、これまでで最多の24チームの参加がありました(2003年には14チーム、2004年には16チームが参加)。今年から社団法人go4schoolが大会運営を行い、ドイツ囲碁連盟は支援者として関わることになりました。カストロプ・ラウクセルのホルスト・ティムさんの豊富な経験に基づいた指揮により、参加者のいろいろな問題をきめこまかく調整することができました。特にgo4schoolのウェブサイト上で申し込み手続きができるよう改良したため、参加者は50パーセント増えました。参加者の皆さん全員にとって素晴らしい大会になったことを願っています。

 多くのボランティアと引率の方々、ピーチ家の皆さん、ドイツ囲碁連盟、そして3つの州立団体、いくつかの学校支援団体、カストロプ・ラウクセル貯蓄銀行、ドイツ囲碁連盟ハンブルク支部「サルスベリ会」のカンパ提供者の皆さんが、準備段階からの支援者として、大会の運営・財政面での成功のために協力して下さいました。

 プロ棋士の小林千寿五段重野由紀二段のお二人、後援者のハンス・コシュニク氏、ならびにカストロプ・ラウクセルの市長に感謝いたします。また、日本棋院、カールセン出版、ヘープザッカー出版、ソルトレークシティの株式会社スマート・ゴおよびドレスデンのデリカテッセン工場ドクター・デルからは、物的支援をしていただきました。

 優勝したのは、エルディングのアンネ・フランク・ギムナジウム(メンバーはマティアス・キィアン、マクシミリアン・ドライアー、コルビニアン・リープル、引率はgo4school役員でもあるカール・シャイトラー)でした。このチームは過去二回の大会で二度三位になっていましたが、今回三度目の正直でついに優勝しました。心からおめでとう!準優勝は地元のカストロプ・ラウクセルのヴィリー・ブラント総合学校(ヨシュア・ヘナケス、ラファエル・ゲーベルト、サシャ・ラルコフスキー)、三位はベルリンのライプニッツ・ギムナジウム(ヨハネス・オーベナウス、アントン・ザガルチク、ヤニク・ボロスケ)でした。(昨年優勝したコブレンツのチームは、クラス旅行のため参加できませんでした。)

 ハンデ戦の部でピーチ賞を獲得したのはオッフェンブルク商業学校、第二位はランクライゼス・パルヒム職業学校、オルデンフェルデ第一ギムナジウム、ベルリンのアンネ・フランク高校、ドレスデンのベルトルト・ブレヒト・ギムナジウムの4校が分けあいました。

 5勝したのは、ヨハネス・オーベナウス三段(ベルリンのライプニッツ・ギムナジウム)、マキシミリアン・ドライアー6級とコルビニアン・リープル12級(エルディングのアンネ・フランク・ギムナジウム)、パトリック・フォドル12級(ウンターグリースバッハ・ギムナジウム)、アンドレ・フーレンドルフ16級(カストロプ・ラウクセル第二)、マルコ・シェプル16級(ベルリンのアンネ・フランク・ギムナジウム)の6名。12人の学生が4勝1敗でした。

 ホルスト・ティムとクレメンス・ヴィンクルマイアーの編集協力による大会報告と、大会アンケートの集計結果が、次々号のドイツ囲碁連盟の機関誌に掲載される予定です。他にプレス記事としては、ルール地方ニュースと西ドイツアルゲマイネに9月25日付けで、ミュンヘンメルクーアに9月29日付けで記事が出ています。カールセン出版のマンガ雑誌「バンザイ」にも、近々、短い大会報告が載る予定です。参加者の皆さん、心からおめでとう、引率の方々および協力者の皆さん、本当にありがとうございました。

 さて楽しみなのは来年の大会です。次回の開催地については追ってお知らせすることになりますが、ともかくカストロプ・ラウクセルよりは南になる予定です。今のところ、フランクフルト近郊のオーバーウルゼルとヴュルツブルクが有力で、いずれも開催地として素晴らしい場所です。


小林千寿五段の大会レポート(週刊碁より)
中央:小林千寿五段 文中の謎の美少女?(撮影2004年9月)


 第三回ハンス・ピーチメモリアルトーナメント(HPM)が九月二十四・二十五日ドイツのデュッセルドルフから五十キロほどのカストロップーラウクセルで開催された。

 二〇〇三年一月に海外囲碁普及の公務でグアテマラを訪問中、強盗の銃弾で帰らぬ棋士となってしまった故ピーチ六段を偲び、ドイツの子供の囲碁大会が二〇〇三年に発足した。

 又今年からはドイツの青少年に碁を広める為の基金(GO4BOND)ができその組織が大会を運営することになった。この大会はピーチ氏の誕生日九月二十七日に因んで毎年九月最後の週末にドイツ各地で開催される予定となっている。

 大会は小、中、高校の三名の団体戦。欧州初の学校団体戦である。団体戦の良い所はかなり弱い棋力でも選手として参加できる事。生徒の棋力は三段(日本の五段)から20級までと、まだ、かなり幅がある。今回は二十四校が参加。(一つの学校からは二グループのみ参加)

 ホスト校になった高校では百名も碁を打つ生徒がいるので代表選手を選ぶのが大変なほどの盛況ぶり。 子供に碁を教えるのに熱心なハンブルグの小学校は選手以外の子供もオブザーバーとして来ていた。

 私は昨年に続き二回目の参加で一年ぶりのこどもたちの成長振り上達振りに、目を見張らされた。昨年大会前夜に会場で長い金髪の美少女? が碁を打っていた。後ろから見ていると、手つきも良くかなり強そうだ。そこで、他の子に『あの女の子はどのくらい強いの?』と聞くと『女の子?』『あれは男の子だよ!』『え~??』私だけではなくドイツの人達も間違えていたから本当に美少女イヤ美少年であることに変わりはなかった。その少年(現十四歳)が今大会の最高段の三段で一番強い。

 会場に集まったこどもたちの中から彼を探す。なかなか見つからない。 それもそのはず、長い髪は肩までに切られ肩幅も広くなり美少女ではなく立派な青年に変貌していた。

 彼のチームはベルリンからで、彼らに碁を教えているカーリー氏の存在が大きい。東西のドイツが一緒になってからのベルリンは、貧富の差が大きく貧しいこどもたちは学校が終わると共働きの両親が多いため、外でよく遊んでいる。そこへ社会福祉的にカーリー氏は路上囲碁教室を行なっている。

 ひょっとすると、こんなところから第二のハンス・ピーチが現れるのかもしれない。

 しかし、物事にかなり楽感派の私でも欧米からそうたやすくプロレベルのこどもが簡単に出てくるとは思えない。

 でも、世界の日本マンガブームの中で碁を楽しむ青少年は激増中だ。ドイツでもフランスに次、昨秋に『ヒカルの碁』の単行本も出版された。今まで『プロ棋士』という職業を日本国内でも理解してくれない人もいたのに、今やマンガのおかげで欧米のこどもたちから『スゴイ!』と尊敬の眼差しで見てもらえる。

 ハンス君もこのこどもたちに囲まれて碁を教えたかっただろう。大会中ある先生から『西欧の碁の生徒の面倒を見てくれてありがとう』と言われた。そして、閉会式の時のこどもたちからの花のブーケと拍手に私は『又来年!』と心に誓った。



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