加藤正夫理事長お別れ会

昨年暮れ、12 月30 日に急逝した加藤理事長の葬儀にかわり、日本棋院では「加藤正夫理事長お別れ会」を、下記要項で執り行います。
                            
日時 平成17 年1 月21 日(金) 午後2 時〜
場所 東京市ヶ谷「日本棋院会館2階」
主催 財団法人日本棋院
世話人代表 工藤紀夫理事長代行
※当日の服装は平服とし、供花、供物、香典は固くお断りいたします。
この件に関する問い合わせ日本棋院総務部
電話03−3288−8601


加藤正夫逝去――昨年暮の30日、この突然の信じられない訃報が全国に世界中に駆けめぐり、囲碁ファンは悲しみの淵に沈んだ。17歳で入段し、40年有余の棋士人生で積み重ねたタイトル獲得数は47、通算成績は1253勝664敗2ジゴ1無勝負。“殺し屋”というユニークなニックネームで愛された、歴史に残る超一流棋士だった。この数年は日本棋院改革のリーダーとして常に先頭に立ち、昨年、理事長職に就任、その激務のさなか12月7日に倒れ、入院手術、そして3週間…永遠の眠りについた。

 平成14年、加藤正夫九段は王銘エン本因坊を四-二で破り、23年ぶりに本因坊位に返り咲いた。55歳での獲得は史上最年長本因坊。

 その七番勝負が始まる直前の本紙インタビュー最後の部分――体調はいいと? 加藤「最近、太っちゃってね、体力がついた感じ。昔は拒食症だったわけじゃないけど、食べなくても平気でした。今はけっこう食べますよ」。このあとオフレコということで、棋院改革についていろいろと話を伺った。「毎日、日本棋院に精勤しています。経営については初心者だから、碁を打つよりずっとくたびれるよ」と言う加藤九段の、ひとなつっこい笑顔はもう見ることはできない。七番勝負に入り二連敗後二連勝した第四局のとき、加藤九段は副理事長就任の要請を受けたという。


 昨年の本紙・新春スペシャルトーク第五弾に登場した加藤副理事長は、コミ六目半への移行、大手合廃止、予選制度大改革など一連の碁界近代化について、「評価はこれから受けるものです。おそらく数年のうちには…」と言いながらも、納得の表情を見せていた。

 話題が子どもたちへの囲碁普及に移ると、加藤副理事長のトークは熱を帯び、尽きなかった。加藤「今まで少数の強い子だけが参加する個人戦しかなかった。(小・中団体戦は)実は以前から温めていた構想だったの」(モデルケースとして福岡で試された)「それで手応えを感じました。弱い子が入ってもチームは勝つということもある。励ましあって頑張っている子どもたちを見て、これはいけるぞとね」。

 6月に理事長就任。8月に念願の第一回小・中団体戦が行われた。しかし、県別チーム編成での参加となり、加藤理事長の目指した学校単位でのチームづくりは間に合わなかった。まだ道半ば、これからの最大のテーマと思われていたのではないだろうか。加藤理事長から「週刊碁もタイトル戦ばかり追ってるだけじゃなく、学校への普及にもスポットを当ててね」と宿題を出された。その声が今も耳に残っている。

 週刊碁編集室が異変に気づいたのが、12月10日の張栩新名人就位式を加藤理事長がキャンセルしたことからだった。すでに三日前の7日に脳梗塞で倒れ、都内・世田谷区の病院に入院していた。そして10日には手術を受けていた。

 手術は成功し、徐々に回復に向かっていると伝えられた。声にはならないものの、家族の呼びかけに応えるなど、反応も出てきていた。

 28日、容態急変。消化器管出血(合併症)を併発、必死の治療と家族や木谷門下棋士たちの祈りも届かず、30日午後12時33分、加藤理事長は息を引き取った。享年57歳。

 お通夜、告別式は近親者だけで行われた。日本棋院では「加藤正夫理事長お別れ会」を、1月21日金曜日午後2時から、東京・日本棋院で行う。

<工藤紀夫理事長代行>
 本来なら新年のご挨拶をするところですが、ご存知のとおり、昨年暮の30日、加藤正夫理事長が帰らぬ人となりました。日本棋院改革をともに推進してきた利光松男前理事長に続き、加藤理事長まで失い、日本棋院は深い悲しみに包まれています。

 加藤正夫は殉職と思います。加藤さんは正義感と責任感あふれる男でした。4年前に改革委員会の座長となり、2年前に副理事長、昨年6月に理事長に就きました。この4年間あまり、加藤さんは様々の日本棋院改革に没頭してきました。子どもたちへの囲碁普及に心をくだき、全国各地を飛び回ってきました。

 加藤さんはご家族の方に、あと2、3年すればバトンタッチしてふつうの棋士生活に戻ると、話していたそうです。今思えば、もう少し加藤さんの重荷を手助けできなかったかと、悔やんでも悔やみきれません。

 さて、今年はインターネット事業が本格的に起動し始めました。最も力を入れ発展、成功させなければならない事業です。ファンの圧倒的な支持を得られるよう、完成度の高いシステム構築を目指していきたいと思います。また、加藤さんが心血を注いで昨年立ち上げた小中学生団体戦の、更なる拡大、充実へ前進していく所存です。

 全棋士、職員が力を合わせ、改革、囲碁普及にまい進します。後任の理事長が決まるまで、わたくし工藤が全力で務めさせていただきます。ファンの皆様の暖かいご支援をお願い申し上げます。



昭和51年碁聖戦。大竹碁聖(左)を破り、初タイトルを獲得した

若きしの加藤理事長
加藤正夫昭和22年3月15日生まれ。福岡県筑紫郡。34年木谷實九段に入門。39年17歳で入段。42年五段、53年九段。平成16年6月、日本棋院第13代理事長に就任。門下に大森泰志八段、鈴木伊佐男七段、小山栄美五段、梅沢由香里五段。日本棋院東京本院所属。平成16年12月30日逝去、57歳。

加藤正夫全成績
昭39 18勝4敗★
 40 24勝6敗
 41 31勝9敗
 42 36勝8敗
 43 21勝11敗
 44 33勝10敗
 45 31勝13敗
 46 36勝14敗
 47 29勝15敗
 48 35勝11敗
 49 35勝21敗
 50 25勝15敗★☆
 51 46勝16敗
 52 31勝13敗
 53 30勝21敗
 54 33勝11敗
 55 25勝18敗
 56 29勝26敗
 57 26勝21敗
 58 27勝13敗
 59 28勝19敗
 60 32勝16敗
 61 35勝12敗
 62 36勝11敗
 63 23勝24敗
平元 22勝25敗
 2 25勝18敗
 3 30勝19敗
 4 36勝9敗
 5 40勝22敗
 6 39勝11敗
 7 42勝25敗
 8 34勝14敗
 9 37勝23敗
 10 30勝23敗
 11 37勝20敗
 12 26勝14敗
 13 37勝18敗
 14 29勝22敗
 15 18勝22敗
 16 16勝21敗

(★はジゴ、☆は無勝負)
※通算1253勝664敗2ジゴ1無勝負
週刊碁2005年1月17日号より