<藤沢秀行名誉棋聖日本棋院復帰>


 日本棋院では本日の理事会において、藤沢名誉棋聖の日本棋院復帰を決定致しました。(7月1日付)
 藤沢名誉棋聖は、平成11年11月本院を脱退し独自の免状を発行する旨の表明をしましたが、免状発行は本院の寄附行為の趣旨に混乱をもたらす恐れもあり、12月に除名処分と致しました。
 爾来4年弱を経て、来年創立80周年を迎える日本棋院としては、その歴史において功績のある藤沢名誉棋聖は欠かせない存在であります。幸い、本人からも今後免状は発行しないとの確約を頂き、この度の復帰となりました。

平成15年7月1日
財団法人日本棋院広報




<利光理事長声明文>

 藤沢秀行名誉棋聖に日本棋院に復帰してもらうことになりました。
 藤沢先生が日本棋院からの脱退を表明し、日本棋院が藤沢先生を除名したことに、釈然としない気持ちを抱かれたファンは多かったと思います。
 藤沢先生は囲碁界の大功労者。棋聖戦や名人戦の活躍はもとより、多くの棋士が藤沢先生の薫陶を受け、中国や韓国でも高い評価を受けていることを承知しています。日本棋院は来年創立八十周年という歴史的にも節目の重要な年を迎えます。そのようなときに藤沢先生に日本棋院に戻って頂きたい気持ちは、私だけではないと思います。
 ただし、日本棋院には譲れない一線があります。独自の免状発行です。これを許すと、免状の統一性、信頼性がそこなわれ、寄附行為によって成り立っている日本棋院の存立自体が危うくなります。その旨を藤沢先生に申し入れたところ、今後、一切独自の免状を発行しないという確約を頂きました。
日本棋院は藤沢先生をまだまだ必要としています。若手を厳しく指導して、韓国・中国に負けない棋士を育てていただきたい。またアマチュアにも接して、囲碁の普及にもご尽力いただきたい、と念じております。

                                         理事長 利光松男



<藤沢秀行名誉棋聖声明文>

 私が日本棋院を離れて四年になろうとしています。この間の生きざまというか囲碁人生は、それまでと何ら変わることがありませんでした。送られてくる膨大な棋譜を調べて自分なりに研究する。若い諸君から寄せられる質問にも答えなくてはなりません。研究会や合宿も以前と同じようにやってきました。
 私自身は拙を守って、このまま朽ち果てるつもりでした。ところが棋士及び囲碁ファンの方々から日本棋院に復帰したらいかがかといった声も出て来ました。さあこれは盤上の一手より難しい。
 四年前、日本棋院を脱退したときは、免状問題だけが騒がれましたが、脱退の理由はそれだけではありません。赤字体質の改善は遅々として進まず、世界に通用する棋士を育てようとしない。執行部に将来の囲碁界への展望もない。そんな状況に腹を立てたのです。捨て身の行動で少しは目をさましてほしいとの気持ちもありました。ただ免状問題では警鐘を鳴らしたつもりが、結果的に日本棋院に迷惑を掛けることになってしまいました。
 思いが通じたわけでもないでしょうが、執行部は一新され、いい方向に動き出したようです。とすると、いつまでも意地を張ってる理由がないではないか。
こうして日本棋院への復帰を決断しました。この間、「頑張れ、秀行」と応援していただいた皆様には、改めて感謝申し上げます。
 老残の身にできることはそう多くはないでしょう。しかし日本棋院に育てられた私が、最後の力を振り絞ってお役に立てることもあると思います。

                                            藤沢秀行

財団法人 日本棋院