国際感覚がほしい!



 皆さんは『応氏杯世界子供GOE大会』と言う大会を耳にした事がありますか?

ここヨーロッパにおいては唯一本場アジア圏の強い子供達や、アメリカの子供達と顔を合わせる貴重な機会として、注目度大のイベントです。

 今年で17回目を迎えるこの大会ですが、今回初めてヨーロッパはチェコの首都プラハで開催されました。私にとっても初めてのこの大会に、わくわくドキドキでミラノから駆けつけました。

 名前の如く応氏財団がスポンサー。今年の参加国は韓国、中国、日本、台湾、シンガポールのアジア諸国に加えヨーロッパ、アメリカ、カナダ、地元チェコの計8地域から選ばれた少年少女20人が集まり、一週間にわたって世界1位を競います。

 まず大会方法をご紹介しましょう。

 12歳と18歳以下(プロのある国は16歳以下)の2クラスに分かれ、それぞれ5回対局します。その勝敗を基に上位4名を選出し、最終勝ち抜き戦で優勝者を決めるのです。

コミ8目、ダメも?目になり正確に180個づつの石がなければ対局出来ない、云々と言った応氏ルールのお話しは以前このコーナーで書きましたが、この大会もその一風変わった応氏ルールでの対局です。
ちなみに名称も「GO」でなく「GOE」。自分でゲームの名前まで変えてしまう程の徹底ぶりです!


 さて、優勝を決めたのはどこの選手だと思います?
まるで今の国際棋戦状況を反映するかのように、2クラスとも決勝は中国と韓国の対決になり、そのどちらも韓国少年が優勝です。

中国少年は13才プロ初段、(中国は6段以上が正式プロ)韓国は院生のトップクラスで入段間近の14才少年、と聞いてるだけでも強い両者ですが、内容もさすがです。

決勝戦までのそれぞれの対局は、手合い違いと言ってもいいくらいレベルの差があり、まあ相手がヨーロッパやアメリカ選手ならともかく、日本や台湾の選手達ともこうも違うのか、と現実を目のあたりにし愕然としました。


 正直に言ってこうなる結果は初めから見えていました。なぜなら選手選抜の基準が他国と日本では明らかに違う、つまりこの大会にかける意気込みや大会自体の認識度が違うのです。

 実際他国ではトップ選手が参加しているのに比べ、日本はまだ学校就業期間である事や院生はプロ試験が始まった、とかで選手選抜に難航し、結局全国の院生中で参加出来る子供を探す、と言うやり方です。どちらの理由も心情的には分かるのですが、世界大会に参加する以上は日本代表として一番強い選手を送るのがマナーではないでしょうか?

 囲碁が国の枠を離れ世界が舞台になりつつ今、院生にとっても日本棋院にとっても入段が何より大事と思う考え方に私は疑問を感じます。世界?位になりたい、ぐらいの意気込みがあっていいんじゃないですか?国の代表として世界大会に参加する事が、どれだけの意味があるのか、感じないのでしょうか。

 韓国のチームリーダーには、『韓国トップ選手に碁の分野でのメリットはないね、来年は2、3軍の選手を送った方が他国にも勝つチャンスが出て双方にとって良いんじゃない?』と言われる始末です。韓国選手は重要な対局が詰まっている為、表彰式も待たずにソウルへと。これでは本人の負担が大きく、ひとこと言いたくなる気持ちも分かります。

 勝負の世界である以上、実力的に劣るなら仕方のない事です。でもこうした国際認識の違いはどうしたらいいのでしょうか?深刻な問題だと思います。日本が国際囲碁舞台で勝てない理由が、何となく分かるような気がしました。