インドでの囲碁指導


 3月に入りミラノは急に春めいて、花々も芽葺き始めました。皆さんお元気ですか?
さて、先月は季節を飛び越え初夏のインドへ2年ぶりに囲碁指導に行ってきました。
ムンバイ、デリー、アウロビイラの3ヵ所を周った3週間の滞在です。

 今回はアウロビイラの囲碁グループを紹介して下さった武知ハルミさんが日本から駆けつけ、同行して下さったので心強かったですね。なにせインドなので、、、。
ちなみにハルミさんは日本ではフツーのおばさんですが、世界的にはその名も知れた日本人女性碁プレーヤー。一年の数ヵ月を海外で過ごし、その間囲碁イベントを軸に囲碁フレンド宅を尋ね歩き世界を飛び回る、スーパーマンいえ、スーパーおば様なのです。特にロシアには毎年出かけられ、ロシア囲碁協会から名誉顧問に任命されている彼女です。

 話を囲碁に戻しましょう。
デリーでは2年前から続いている2つの小学校での囲碁指導、日本人会囲碁グループの皆様に指導したり、そうそう、インド外務大臣MR.シンに手ほどきする機会にも恵まれました。            
 シンさん(あえて親しみをこめて!)は以前から囲碁に興味を持っていたらしく、囲碁大好きの平林日本大使に機会を伺っていたらしいのですが、忙しい身の上なかなか実現せず。この日、初の囲碁入門となった訳です。     
 当日平林大使、ハルミさん、中島記者、私の4人でインド外務省へ伺い、いくつかの検査機を通り抜け執務室へ。机上にはシンさんが中国在インド大使に頼んで購入した、と言う中国製の碁セットが静々と置かれていました。
 シンさんはかなり渋めの、丹波哲郎風ダミ声で「おお〜お忙しい日本大使にわざわざおいで頂いて恐縮です」インド人らしくない聞きとれる英語でまず一言。上品な香が焚き込められた部屋はシックにまとめられ、私達と秘書(かなりハンサム)のみ。

「私は戦略を学びたくて、囲碁に大変興味を持っているのですよ」           
軍部出身でマハラジャの血を引くシンさんは、目の付けどころが違います。
 簡単なルール説明の後、早速ご自身が対局して見たいとおっしゃる。ではまず大使かハルミさんがお相手を、、、と勝手に思い込んでいたら、「折角プロがいるんだから」皆、口を揃えて言うので無抵抗のまま話は決まり。それではハンディーはどうしたものかな、、、と、思いきやシンさん白石のゴケをすっ〜と引きよせ例のダミ声で、
「レッツ、プレー」。
いきなり互い戦を所望され内心、真っ青!ルールを今覚えた(それも怪しいげ)ばかりの人と、形になるような碁にして、勉強になって、更に楽しんでもらうのは至難の業ですもの。
この気持ちお分かり頂けます?

 無事白石を取り戻した後、和やかムードの中で対局は進めれら、最終的に整地の説明まで行い終局を迎えられたのは、奇蹟的とも言えるでしょうか。なにしろ相手は初体験なのですから。
 さすが戦略に興味があるだけあって、全体を見る目は鋭くバランスが良い、絶対に囲碁向きだ、と本心から皆で持ち上げたのですがその後どうされたでしょうか。これが良い機会になれば嬉しいです。

 アウロビイラはマドラスの南300キロにあり、国籍や人種などに関係なく、自給自足の共存生活を目指した開拓集団です。30年程前に砂漠だったこの土地に植林から始め、今では住居者1500人、外国人とインド人が半々の大きな村、組織です。病院、学校食料品店なども整っていて、困る事と言えば毎日のようにある停電でしょうか?周囲は様々な熱帯樹林が生い茂り、さながらパラダイスです。言葉で説明するのは難しいですね、皆さん想像出来ますか?

 ここにも囲碁ファンがいます!全員で30人程、毎週日曜日に定例会、また暇さえあれば好きな者同士集まって楽しんでいます。現地インド人はいなく、ドイツ、アメリカ、イタリア、オランダ等、海外からの移住者で、殆どがここで囲碁を覚えた人ばかり。

今、この村の学校で子供達に囲碁を教えたい、と張り切っています。さてどうなりますか、とても楽しみですね。
予想に反しインドですっかり太ってしまいました、何故かがっくりです。