○日本棋院ネット対局【幽玄の間】 トークライブレポート○
山下敬吾 棋聖・王座
昭和53年9月6日生。北海道旭川市出身。
昭和61年:全国少年少女囲碁大会優勝。小学2年生(最年少記録)
菊池康郎氏(緑星囲碁学園)に師事。
平成5年入段、同年二段、7年三段、8年四段、9年五段、10年六段、12年七段、15年九段。 日本棋院東京本院所属

10年:第23期新人王戦優勝、初タイトル。13年まで四連覇達成。
11年:第14期NEC俊英トーナメント優勝。
12年:第30期新鋭トーナメント優勝。
同12年第25期碁聖戦で小林光一碁聖を破る。初ビッグタイトル獲得
15年:第27期棋聖戦で王立誠棋聖を4-1で降す
16年:第30期天元戦で羽根直樹天元を3-0で降し天元位獲得。
18年:第30期棋聖戦で羽根直樹棋聖を4-0で破り棋聖位復位
同18年:第54期王座戦で張栩王座を3-1で破り初の王座奪取
19年:第31期棋聖戦で小林覚九段を4-0で破り初防衛
同19年:第45期十段戦挑戦者。趙治勲十段と五番勝負。

通算タイトル獲得数 12

16年:通算500勝達成
★25歳6ヶ月で達成(史上2位)、入段から10年11ヶ月で達成(史上最速)、達成時勝率.763(史上1位)
18年:通算600勝達成
☆27歳10ヶ月で達成(史上1位)、入段から13年4ヶ月で達成(史上最速)、達成時勝率.736(史上2位)
●イベント詳細●
開催日時   2007年3月27日(火)  16時〜17時半
開催場所 日本棋院ネット対局「幽玄の間」
イベント内容   1.山下棋聖インタビュー 2.質問コーナー 3.棋聖戦第3局自戦解説
プレゼント
ご当選者
 質問コーナーで山下棋聖にお聞きする質問をお寄せいただいた方の中から抽選で2名様にプレゼントをお送りしました!
ご当選者は下記の方々です。おめでとうございました!!

●山下敬吾棋聖 直筆揮毫色紙(
2名様
バリ3様、ガマチャン様
 ←山下棋聖の揮毫は「飛翔」!

       山下棋聖、揮毫中・・・→
  


山下棋聖には、トークライブの開始前に揮毫していただきました^^
応募フォーム
進行係 : みなさん、こんにちは。本日は山下敬吾棋聖防衛記念トークライブ [フルスイングの威力に迫る!]にお越しいただきましてありがとうございます。進行係 : 山下敬吾棋聖登場!
山下敬吾 : こんにちは。よろしくお願いします^^今日はお越しいただきましてありがとうございます。
進行係 : それでは、これより山下棋聖へインタビューを行います。なお、このインタビュー中はお客様からのご質問はご遠慮いただきます。皆様のご協力をお願いいたします。山下棋聖、どうぞよろしくお願いいたします。
山下敬吾 : よろしくお願いします。
進行係 : さて、皆様ご存知のことと思いますが、1月から始まりました第31期棋聖戦で山下敬吾棋聖が4連勝でタイトルを初防衛されました。ここで改めてお祝いをさせていただきたいと思います。おめでとうございます!
山下敬吾 : ありがとうございます^^
進行係 : 4連勝という見事な戦績でしたが、今回の棋聖戦にはどんな気持ちで臨まれていましたか?
山下敬吾 : えー、始まる前に今まで防衛したことがないと言われていたのですが、あまり周りの声は気にせずに、自分の力を出しきって打とうと思っていました。
進行係 : 毎回激しい碁で、見ている方としてはスリル満点でした。山下棋聖自身もやはり激しい展開がお好きなのでしょうか?
山下敬吾 : そうですね、あまり地を取ってヨセ勝負というよりは自分としても戦いの展開の方が面白いですし、見ている方もその方が面白いとおもうのでその方が好きですね。
進行係 : 秋に王座戦から始まり、天元戦、棋聖戦、現在進行中の十段戦と4連続で挑戦手合に登場されています。挑戦する立場と迎え撃つ立場では、対局するときの気持ちは変わってくるものでしょうか。
山下敬吾 : 始まる前は自分としてはあまり挑戦と迎え撃つ立場で違わないように思って打つのですが、どうしても挑戦手合が始まると防衛戦では守りたいという気持ちが出てしまいます。ただ、守りたいという気持ちが強くなるとよくないので、思い切っていきたいと思っています。
進行係 : タイトル戦続きでご多忙だと思いますが、忙しい中で気力を充実させたり、対局に集中したりするコツや、何か気をつけていらっしゃることはありますか?
山下敬吾 : 一番気をつけているのはやはり体調管理ですね。体調がよくならないとどうにもならないので、まずは体調をよくすることと、あとは、対局が続くと碁盤を見るのが嫌になるようなときもあるので、そういうときは、対局を忘れて、子供と遊んだりして気分転換します。
進行係 : お子さんはおいくつになりましたか^^?
山下敬吾 : あと3ヶ月で3歳ですね^^ 今が一番可愛いときらしいです。
進行係 : これから先、十段戦挑戦手合に加えて、4月14日からは富士通杯も始まります。世界戦での山下棋聖の活躍をファンの皆さんも期待されていると思います。ぜひ意気込みを聞かせてください。
山下敬吾 : 世界戦ではずっと負けっぱなしで、ファンの方の期待を裏切り続けているので、もうそろそろ何とかしたいなと思っているのですが、とにかく1局1局全力を尽くして、少しで皆さんの期待にこたえられるようにしたいと思っています。最近は調子もそんなに悪くないと思うので、富士通杯ではそれなりに期待していただいて大丈夫かと、自分では思っていますが^^
進行係 : 山下棋聖、ありがとうございました。
皆様からの質問に、山下棋聖も思わず・・・
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進行係 : それでは続きまして、質問コーナーへ移ります。皆様から事前にお送り頂いた質問に、山下棋聖がお答えいたします。やはり山下棋聖への質問ということで、囲碁に関する質問が集中していました。 まず、囲碁全般について質問をしていきたいと思います。無無 明様より。「今日の対局は先番6目半コミ出しが主流となっています。黒番、白番どちらが好きでしようか?」
山下敬吾 : 以前は黒の方が好きで、打ちやすいと思っていたのですが、最近は黒の立場だと布石が難しいなという感じを受けるようになってきました。黒の立場だと布石をリードしていけるのですが、6目半というコミは大きいので、早めに仕掛けていくタイミングが黒としては悩みの種ですね。白は、わりと、相手について行けばいいような感じもあって、そういう面では白のほうが楽ということはありますね。
進行係 : 続きまして高平山様より。「日本、中国、韓国の碁の違いはどのようなところだと思いますか」
山下敬吾 : 以前は韓国の碁は地に辛いというようなことがいわれていましたが、最近は情報がすぐに入ってくるような状況なので、国によっての違いというのがなくなってきたのではないかなと僕は思っています。もちろん、どの国にも地が好きな方も、戦いが好きな方もいると思いますが。それでも、日本は序盤から時間を使う人がいまだに多いと思います。中国や韓国の棋士は序盤に時間を使わずに、中盤以降の勝負どころに時間を残しておく人が多いので、そのあたりは持ち時間の差もありますが、そういうところが違うかなとは思いますね。
進行係 : 続きまして、囲碁の勉強方法について。
山下敬吾 : 最近対局が忙しいので、研究会などには顔を出していないので、家で詰碁をやったり、碁並べたり、そういう勉強が多いですね。
進行係 : 友也様より。「接近戦に強くなるためにはどうしたらいいのですか?」
山下敬吾 : これはやっぱり、普段の勉強としては、詰碁をやってヨミの力をつけることが一番ですね。実際の対局のなかでは、できるだけ自分の有利なところで戦いをおこすというのが、1つのポイントかなと思います^^
進行係 : 次は囲碁についてちょっとマニアック(笑)な質問です。H70GG様より。「今後、5の五を打つ予定はありませんか?そのとき、相手はどう対処するでしょうか?」
山下敬吾 : 今現在は5の五や天元を打つ予定はないですね。ただ、また何年かたって、5の五や天元に限らず、珍しい手を打つことがあるかもしれないです。
進行係 : 楽しみですね^^!
山下敬吾 : 以前打っていたときは、何局か打ってみて5の五と天元はあまりよくないのではないかと、思いました^^; 目ハズシも最近あまり打っていないのですが…^_^;
進行係 : では場も暖まってきたところで、山下棋聖のプライベートについての質問に移っていきましょう。 ゴースト様より。「対局のない日は何をされているのでいるのでしょうか?」
山下敬吾 : そうですね。基本的には勉強するか、子供と遊んでるくらいです^^あまり何もやっていないというのが、正直なところですね^^;スポーツも特にやっていなくて、子供と一緒に散歩するくらいです。
進行係 : いわな様より。「好きな食べ物は何ですか?」
山下敬吾 : お寿司がわりと好きですね。好きなネタは・・・穴子、マグロ、かな。大トロよりは中トロ派ですね^^もちろんお肉も好きですが、ステーキなどは最近重くなってきたので、しゃぶしゃぶなど軽いのがいいですね^^
進行係 : 続きまして、自然様より。「「フルスィング」といわれてしばらく経ちましたがこのニックネームに関して棋聖ご自身のご感想は?」
山下敬吾 : これは、僕だけじゃなく、他の四天王といわれている方たちもそうだと思うんですが、初めて聞いたときは、「なんだこれは!」という感じでしたね。正直なところ。あんまり自分では合っているとは思わないのですが、周りの方には、合っていると言われたので、しぶしぶ納得しました^^;4人の中では張栩さんの韋駄天が一番マシかなと思いましたが・・・高尾さんの重厚戦車は、僕よりもちょっとびっくりしました^_^
進行係 : ちょっと小耳に挟んだんですが、山下棋聖の長時間正座には隠された謎があると!
山下敬吾 : 隠された謎かどうかわかりませんが、よく正座が大変じゃないですか、と聞かれるのですが、僕もどうして正座ができるのかわかっていなかったんですけど、僕自身は子供の頃からの慣れだけかなと思っていたんですが、高尾さんに教えてもらったのは、正座をずっとしていると足の血管が太くなって正座が楽になると教わりました。本当かウソかは、高尾さんが言ったことなので、あまり信用していないのですが…^〜^
進行係 : ここで2・3ほど、会場の皆さんの質問を受け付けようかと思います^^!面白そうな質問に、山下棋聖がお答えします^^
qsghjgjhg : 古典で好きな棋士は?
山下敬吾 : 古典で好きな棋士は・・いっぱいいるんですが、最近は本因坊秀栄が好きですね。
ピノ : ライバルは誰ですか?*_*
山下敬吾 : ライバルは・・・もちろん四天王と言われる人はみんなライバルですし、世界中に強い人がいっぱいいるので、みんなライバルだとは思っていますが、まずは相手よりも自分に勝たないといけないので、あまり誰には負けたくないということは考えず、自分の力を出せるようにしたいと思っています。
みっちーN : お子さんは、どういうところがかわいいですか?
山下敬吾 : 子どものかわいいところは、子どもは無邪気なので、自分が落ち込んでいたりしても無邪気に遊んでいるので、嫌な気持ちを忘れられます。
チョマ : メイド喫茶に行ったことは?
山下敬吾 : メイド喫茶には、行ったことはありません…
進行係 : 以上をもって、質問を終了いたします^^
解説中の山下棋聖の視線は…もちろん碁盤に。 丁寧に解説してくださいました。
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進行係 : 続きまして「第31期棋聖戦第3局」を題材に山下敬吾棋聖に今期の棋聖戦シリーズを振り返ってもらおうかと思います。では、そろそろ始めましょうか^^
山下敬吾:よろしくお願いします
進行係 : 2連勝で迎えた第3局この黒9のシマリは、用意していた手ですか?
山下敬吾:これは、以前王座戦のときに張栩さんと打ったときは、9の手でM-17の大ゲイマにシマリました。

それを少し変えてみよう思って、と打ちました。
進行係 : 注目の下辺は、この後すごいことになりましたね!白28手目の局面、見ている人たちは、ここで何が始まるのか想像もつかなかったのではないでしょうか。山下棋聖はこの局面をどのようにとらえていたんでしょう?
山下敬吾:この戦いが勝敗を左右するといっても過言ではない局面ですね。

僕自身は黒25と打ったあたりで、この戦いはいけるんじゃないかと思っていたんですよね。ただこのあとちょっとミスして、形勢を損じてしまったのですが・・・

このあと白のサバキ方が勝負なんですが、あとから考えてみるとこの時点で形勢は白よしになっていますね。

黒31が疑問手で、Aと打っていればよかったのですが・・・

白のサバキが難しいかなと思っていたのですが、実戦ではカンタンにサバかれてしまいました。
進行係 : この右下白へのノゾキも印象的な場面ですね
山下敬吾:そうですか。僕はノゾキ以外の手はあまり考えなかったので…1つの形というか手順ですよね。よくあるタイミングだと思うのですが…。
進行係 : このあたりでは、観戦していたプロの棋士は、圧倒的に黒ノリでしたね!白40になったときは白がなんだかわからないけど、サバいているように見えますね。実戦では、白は外からアテを打ちましたが、現地検討室ではサガリの検討しかしていませんでした。サガリの対策は?
山下敬吾:僕もサガリを予想していて、正直まいった気持ちで一晩過ごしていました。
進行係 : 黒51は、検討室では露骨過ぎてうたないんじゃないかな?とか言われてました。このあたりから右辺での戦いが激しくなってきましたね。
進行係 : 左下の白は根拠もなく、苦しい形ですね。

ところで、黒87手目の出は怪しかったのでは?白から出ギル図はどうだったんですか?
山下敬吾:これなら、キられても大したことがないので、黒は特に不満はないと思います。
進行係 : 最後の巨大死活まで、一気に進みます。険しいですね。このあたりでは、どのような印象ですか?
山下敬吾:ここでは白の左下隅の大石か118の石のどちらかが取れる状態になったので、優勢だと思っていました。
進行係 : 左下を取り込みましたね
山下敬吾:これで右上隅の白地が全部まとまるようなことがなければ、勝ちなので、ここでこの碁はいけるかな、と。
進行係 : 白も大きく囲ってきました。皆さん、次の一手を覚えていますか?(白132手の局面)
黒133とすごいとこに進入してきたな!って感じでした。
山下敬吾:外から荒らしていっても勝ちなのでしょうが、とりあえずのアジツケですね。
進行係 : このあたり、見ている人は、山下棋聖深く踏み込みすぎでは!
山下敬吾:そうですね。まあ取られてもアジがついて、上を荒らせればと思っていました。
進行係 : 黒が持ち込み?って思ってみてましたが死なないんですね。
山下敬吾:黒が攻められている局面でしたが、外の白が薄いので、そんなに苦しいという感じはしませんでした。

このあたりではシノギが読めていましたね。黒151と打って、黒が全部死ぬことはないな、と。
進行係 :実戦では、黒157で白の投了となりましたが、実際に黒がどうなっているのか、棋聖に教えていただきましょう
白が158と左辺と連絡した場合

山下敬吾:こうなると、AとBが見合いということなんですが、
白が158と中央を連絡した場合

山下敬吾:これだと筋に入って、しっかり生きていますね。
進行係 : では自戦解説はこのくらいにしましょうか。山下棋聖、ありがとうございました。
進行係 : 皆さまお疲れ様でした。ご清聴ありがとうございます
山下敬吾:ありがとうございました。
進行係 : そろそろお別れのお時間が近づいてきました。それでは最後に山下棋聖より皆様へご挨拶申し上げます^^
山下敬吾 : 今日はたくさんの方に見ていただいて、ありがとうございます。僕自身もすごく楽しめました!また今後、みなさんにいい碁を見てもらえるように頑張りますので、応援よろしくお願いします^^
進行係 : 山下棋聖ありがとうございました。それでは、これにてトークライブを終了させていただきます。−フルスイングの威力に迫る!−にご参加いただきましてありがとうございました。今後とも、山下敬吾棋聖への熱いご声援をお願いいたします。
山下敬吾 : ありがとうございました^_^
進行係 : 皆さん、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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