Hans Pietsch Memorial in Germany
(2003/9/27・28)

ハンス ピーチ・メモリアル 大会風景(写真) ドイツ囲碁連盟ホームページ
大会レポート
 去る9月27、28日、ドイツのブレーメン市で、ドイツ囲碁連盟主催による「ハンス・ピーチ・メモリアル・第1回ドイツ学校対抗囲碁団体戦」が開催された。今年1月のハンス・ピーチ六段の突然の死は、ドイツの囲碁ファンにとっても大きなショックだった。彼の死を悼み、彼の名を後世に残すとともに、囲碁を打つ後進を育成するため、ドイツ囲碁連盟は、ピーチ六段のご両親が提供されたお金を基に基金を設立し、子供囲碁大会を企画した。ドイツでは初めての本格的な全国子供囲碁大会である。

 第1回大会は、ピーチ六段の故郷であるブレーメンの武道会館で行われた。学校(日本の小学校から高校まで)単位で3人一組のチームを作って競う団体戦で、ドイツ各地から、14チーム、42人の生徒たちが参加した。開会式には、ピーチ六段のご両親が出席し、後援を引き受けた前ブレーメン市長ハンス・コシュニク氏が開会のあいさつをされた。

 スイス方式で4局打ち、順位を決める。ハンディキャップ制なので、どのチームにも優勝のチャンスがある。武道会館の広い畳の間には、板盤のほか、個人の提供による立派な足つき碁盤も並ぶ。「この大会のために貸していただいた碁盤だから、飲み物をこぼしたり飛び越えたりしたら駄目だよ。」持ち時間は45分。時間が切れたら5分以内に規定の手数を打つルールである。「たっぷり時間はあるからよく考えるように。」しかし子供たちの着手は早く、あっという間に碁盤が石で一杯になってゆく。畳の上での対局は、ドイツでは珍しい。きちんと正座をしている子もいれば、腹這いになって頬杖をついて考えている子もいる。思い思いの姿勢で、みんな真剣そのものだ。

 二回戦が始まる前、「日本では対局を始めるときに「お願いします」と言ってお辞儀をするんだよ」とスタッフから説明をうけ、みんな一緒に「おねがいしまーす」。

 一日目の休憩時間には、地元の武道家による居合道の実演、夜には、引率やスタッフの大人たちも交じった早碁大会、二日目の表彰式には「ヒカルの碁」グッズなどがもらえるくじ引き大会もあり、楽しい企画が盛りだくさんだった。

 子供も大人も寝袋持参で参加し、夜は、昼に勝負が行われた畳の間で寝る。さながら囲碁合宿の趣である。夜遅くまで碁を打ったり、広い板の間で追いかけっこをしてはしゃいだり、二日間の間に、子供たちは、たくさんの友達と、楽しい思い出を作ったに違いない。

 優勝したのは、ハンブルク近郊ノルデルシュテットから参加したコペルニクス・ギムナジウム校チーム。主将のフィン・バッハマン君(10級)は、ご褒美として、小林覚九段にインターネットで指導碁を打ってもらえるという。

 全員で記念写真を撮り、ピーチ六段の六段免状がすかし刷りになった賞状をもらった子供たちは、また来年の大会を楽しみにしながら、会場を後にしていった。

 ドイツでも、後進の育成は課題となっている。近日、「ヒカルの碁」のドイツ語版の雑誌連載が始まることもあり、囲碁に興味を持つ子供たちが増えることが期待されている。この大会が、今後も続き、ドイツの囲碁界が一層発展することを願ってやまない。

(浅井英樹 在ドイツ)